@kedamatti's diary

米山知宏の思考メモです(専門は、知/情報/自律的な組織づくり/プロジェクトマネジメント/ナレッジマネジメント/コミュニケーション/オープンガバメント/民主主義/市民参加/シビックテック)

住民が議会に「正統性」を与える

2012年にまとめた資料ですが、ふと思い出し、アップしてみます。

 

内容は、議会の「正統性」について、討論型世論調査(DP:Deliberative Polling)を絡めながら整理してみたものです。地方議会でDPを実施したところって、ないんですかね。

 

www.slideshare.net

「eデモクラシー時代の『参加』」から「オープンガバメント時代の『参加』」へ

オバマが「オープンガバメント」を提唱して以来、日本でも「インターネットで政治を変える」ということで、この言葉に大いなる期待が集まったけれど、10年ほど前にも「eデモクラシー」に同様の期待が集まっていた。民主主義の質を向上させるという意味では、方向性は同じと思われるが、いくつかの点では変化しているように感じている。

 

特に「参加」というものに対するスタンス。

どちらも「住民の政治参加」を志向しているけれど、以下の点で変わってきているように思う。

 

「直接的&主体的な『参加』」から「間接的 or 非主体的な『参加』」へ

 

一つは、期待する「参加」の重さ。

 

10年前に書かれた「eデモクラシー」の本をあらためて読んでみると、「eデモクラシーで重要なのは、社会的課題についての市民の積極的参加があるかどうか」という趣旨のことが書かれていたが、以前は「参加」というものに「優等生的な市民」を期待していたように思う。

もちろん、政治の質を向上させるには、市民が主体性を持つことも大事だけれど、それほど「主体的ではなく」「積極的でもない」市民がどのように政治に関わるかという視点がそれほど考慮されていなかったのではないだろうか。

 

昨今のソーシャルメディアの普及は、その問題を改善する可能性がある。國領先生は「ソーシャルな資本主義」の中で、「『創発』するためには『見える』ようにならなければならないし、『見える』ようになるためには『つながる』ことが必要」と指摘する。

自ら積極的に政策議論をしたり政治家に意見を提示したりということまでは行わなくとも、TwitterFacebookで政治家をフォローし、なんとなく政治家の活動を見るだけでも、「間接的」であり「非主体的」であるかもしれないが、大事な政治参加と言えるのではないだろうか。

 

第三の参加


二つ目として、これまで想定されなかった参加の形(第三の参加)が生まれているようにも感じている。「第三」とはどういうことか。


政治学者の篠原一先生は、デモクラシーを以下のように二回路制のものとしてとらえている。

 

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・第一の回路は、法治国家によって規定された制度的プロセス

・第二の回路は、市民社会の中での非制度的、非形式的な意見形成のプロセス

(市民の政治学/篠原一

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第一の回路は、主に、代表者によって行われる意思決定が該当し「決定」に主眼が置かれる。代表者を選択する選挙、国民投票、直接投票などもそこに含まれるだろうか。一方で、第二の回路は「市民社会における意見形成」に主眼が置かれる。日本でも実施されている「討論型世論調査」や「プラーヌンクスツェレ」等もここに含まれるだろう。

 

「第三の参加」という表現には、オープンガバメント時代の「参加」が、第一の回路および第二の回路のどちらにも属さない新しい政治参加の形であるという思いを込めたものだが、その最たるものは「オープンデータ」に関する取組だろう。


公的データのオープン化、編集、アプリ化等の取組は、上記の「第一の回路における決定」や「第二の回路における意見形成」を支援し、その質を向上させる可能性がある。それは、従来の「参加」として想定されていた「第一の回路」や「第二の回路」への参加とは全く違うものである。


一言で言えば、第一や第二の回路を支えるための「基盤作り」と言えるだろうか。

政策そのものの議論に参加することだけが参加ではない、ということをオープンデータの活動は示しているように感じる。

 


また、「市民参加の場を市民がデザインするという”メタ参加”」も同様の期待ができるかもしれない。


たとえば地方議会であれば市民との対話の場として「議会報告会」が行われることがあるが、しばしば市民側が期待する内容とズレる。そこで、市民が議会報告会の運営に何らかの形で関与すること(メタ参加)で、双方のズレが解消され、その場の正統性が向上するのではないだろうか。

 

議員定数や議員報酬の削減が叫ばれ、政策自体ではなく議会の場自体への不信感が高まる中、「市民参加の場を市民がデザインするという”メタ参加”」は重要な視点ではないだろうか。

「eデモクラシー時代の『参加』」から「オープンガバメント時代の『参加』」へ

 

住民と政治が、ソーシャルメディアを通じて日常的に間接的なコミュニケーションを行い、うっすらとお互いを認識しつつ、新しい参加のあり方をお互いにデザインしていく。そのことが、第一の回路、第二の回路という従来の参加の質を向上させることにも繋がる可能性がある。

 

伊藤議員は自身のブログ(http://hiro-chan.net/activity/2013/03/post-571.html)で「オープンデータがキャズムを超える日は近い」と指摘するが、オープンデータを含めた「オープンガバメント時代の参加」がより一般的になるためには、「非主体的参加」「第三の参加」「参加の場作りへの参加という”メタ参加”」などの視点が重要になるんじゃないだろうか。

 

第一の回路、第二の回路自体への参加のあり方、それらの相互の関係性を含めて、新しい参加の形を考えていきたい。

 

「ネット選挙」より「議会Web選挙」

ネット選挙が解禁されることで「政策議論が生まれる」「投票率が向上する」「正しい選択ができる」などと期待されているようであるが、個人的にはそれほど期待していない(もちろん、解禁されること自体は望ましいのですが)。「選挙期間中の候補者は都合の良いことしか言わない」というような指摘は従来からあったが、それはネット選挙が解禁されても変わらないし、そもそも国民・市民の側が、選挙期間中の数週間でどれほど適切な判断が行えるのだろうかという疑問もある。

 

それより、選挙期間中以外のことを考えた方が本質的である。たとえば地方議会であれば議員の任期は4年で、選挙期間を除いた期間は約3年11ヶ月もある。少なくとも現職議員については、3年11ヶ月をかけてじっくり選択することができるはずである。何も、選挙期間中になってから悩む必要も無い。

 

今では、多くの地方議会で議事録はWebで公開され、本会議や委員会の様子を動画で公開しているところも少なくない。すでに公開されている情報を見るだけでも、各議員の態度や考え方を把握することができる。とくに動画は、ちょこっと委員会での議論の様子を見るだけでも、「この人だけには投票したくない」という判断ができる貴重な情報源である。以前、とある議会の委員会をYoutubeで見たが、議会改革を進めようという「事務局職員」の提案に対して、一部の「議員」が理由にならない理由を述べて提案に反対していた。このような情報は、投票する際の何よりの判断材料になるが、選挙期間中に候補者から発せられる情報からでは絶対に得ることはできない。

 

とは言うものの、日々忙しく生活する住民にとっては、議事録や動画を見ることは簡単ではない。目的・関心が無ければ見ようとは思わないし、関心があったとしても見る時間が取れない人もいるだろう。そこで検討されるべきは「議会Webのあり方」である。時間が無い中で議会の情報に触れてもらうためには、少しでも見やすく&分かりやすい形で情報を提供したい。

 

議会Webの現状

いまの地方議会のWebも、それなりに情報は公開されている。完璧とは言えないにしても、情報が公開されてなくて議会活動の様子が全く分からないという状況では無い。議員情報、スケジュール、一般質問の通告、議事録、動画、採決結果などは多くの議会で公開されている。積極的な議会では、それらの情報に加え、議員個人の賛否、請願・陳情の検討ステータス、会議時間、各委員会の年度計画等を公開しているところもある。

 

問題は、それらの情報が個別バラバラに公開され、情報間の連携が無いことである。地方議会のWebを見て頂くと分かるが、それぞれの情報は基本的にそれぞれの入口からしかアクセスできない。スケジュールを見たければスケジュールのリンクから入ることになるが、そこからある日の会議の議事録に飛ぶことはできない。改めて、議事録システムに行き、日付等で検索する必要がある。議案や採決結果なども同様である。

 

ヤンキースWeb」と「地方議会Web」

このような地方議会Webの状況に対する解決の方向性として、メジャーリーグのチーム(たとえばヤンキース)のWebが非常に参考になる。

というのも、「ヤンキースWebで提供される情報」と「地方議会Webで提供される情報」は多くの類似点があるからだ(下表)。

 

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ヤンキースのWebを見ると、上記の各情報が繋がっていて、非常に見やすい。

スケジュールを開けば、未来の日付であればチケット予約画面に飛び、過去の日付であれば試合結果に飛ぶ。試合結果の画面からは、各選手の成績にもリンクしていく。

 

選手個人のページでは、ポジションや年齢などの基礎情報だけでなく、最近10試合の成績、最近数シーズンの成績、過去の表彰、動画・写真など、各選手に関する様々な情報を見ることができる。議員個人のページも同じように様々な情報が提供されれば、少しは日常的に関心を持ちやすくなるのではないだろうか。

 

http://newyork.yankees.mlb.com/

 

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  • 地方議会Webであれば、過去日付の会議については議題、議決結果、議事録等にリンクさせたい。そして、未来日付の会議については、その会議で議論して欲しいテーマなどを送付できるようにしても良い。

 

 

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  •  地方議会Webであれば、ある会議の議決結果、議事録、動画などが簡単に見られるようにしたい。TwitterFacebookなどソーシャルメディアとの連携も当然実現したいところ。

 

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  • 地方議会Webであれば、議員個人の賛否、発言などの情報はもちろんのこと、会議の出席率などの情報が公開されても良い。(実際に出席率データを公開している議会はすでにある)

 

議会情報の「一生」を捉える

これからの地方議会Webを考える上で大事な視点は「議会情報の『一生』を捉える」ということだろう。現在は、スケジュールはスケジュールのリンクから、議決結果は議決結果のリンクから、議事録は議事録のリンクからと、各情報が分断されてしまっているが、これらの情報は本来密接に繋がるものである。

 

たとえば「請願」情報の一生を考えると、「本会議での委員会付託」「委員会での検討」「本会議での採決」と大きく3つのステップを踏むが、現在はこの3つのステップの議事録がバラバラに作られる。それらの議事録と最終的な採決結果が相互にリンクし、「請願の『一生』」としてたどった一連の経過を簡単に把握することができれば、住民も議会活動を理解しやすくなるのではないか。

 

情報間に横の繋がりを持たせながら、どのような情報をどのように提供していくべきか。さらには、情報提供だけではなく、地方議会のWebを「議会と住民が交わる場」として捉えた上で、どのようにデザインしていくべきか。

個人的には、議会Webは、選挙時に有権者が適切な判断をする上で、ネット選挙解禁以上に重要なものであると考えている。

 

アイデアとしては色々考えられるが、私の個人的な妄想はまた別の記事で整理したい。

議会のオープン化に関する講演(流山市議会)

流山市議会にお邪魔をさせていただき、
議会のオープン化についてお話をさせて頂きました。

流山市議会は、全国の議会の中でも議会改革に向けた意識が高く、
全国から注目が集まっている議会です。

僕自身も、流山市議会の今後をとても楽しみにしていますし、
是非、全国の地方議会を引っ張っていく存在になってほしいと思います。

当日のプレゼン資料はこちらです。
http://www.slideshare.net/kedamatti/ss-5037521

eデモクラシーの動向と展望

TwitterSNSを活用した政治参加について、記事を書きました。

●eデモクラシーの動向と展望〜再び注目が集まるeデモクラシー〜(PDF)

ネットを活用したからって、Twitterを活用したからって、すぐに政治が良くなるわけではないことは明白ですが、それでも、少しずつまともな民主主義に近づいていることも事実だと思います。盲目的に期待するのではなく、批判的な目を持ちながら期待していくことが大事なのではないでしょうか。

さて、ネット選挙法案はどうなるかな。

著者のプロフィール

所属

株式会社コパイロツト
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員

専門分野

オープンガバメント、民主主義、市民参加、シビックテック。
Open Government, Democracy, Civic Tech.

経歴

株式会社三菱総合研究所(2004年〜2014年)
流山市議会議会改革アドバイザー(2010年、2013年)
東京大学公共政策大学院客員研究員(2013年〜2015年)
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員(2015年〜現在)

活動

第一法規「議員NAVI」での連載(議員のためのインテリジェンス:第1回「データ」と「理論」に基づく政策づくり)、http://www.dh-giin.com/article/20160711/6190/
・日本公共政策学会全国大会での発表(2016年6月)(発表資料:「オープンガバメント・オープンガバナンス時代の社会参加モデル」http://www.slideshare.net/kedamatti/ss-63004188
・ファジーなオープンガバメント—曖昧さ・余白が生み出す市民自治—/「行政&情報システム」2016年6月号寄稿(http://www.iais.or.jp/ja/wp-content/uploads/2016/06/mokuji-06.pdf
早稲田大学マニフェスト研究所主催の勉強会 「エビデンスに基づく議論ができる議員へ~実践者から学ぶRESASの活用~(http://www.maniken.jp/pdf/160514_evidence.pdf)」の講師
CiNii 論文 -  オープンガバメントからオープンガバナンスへ : 欧米の動向を踏まえて(<特集>電子政府・電子自治体)の執筆。
・「市民主体の政策形成のための議会データレポジトリの作成」という提案で、オープンデータ・ユースケース・コンテストでオープン化推進部門で優秀作品に認定(2014年2月)(オープンデータ・ユースケース・コンテスト 表彰式 | ナレッジコネクター
諏訪郡6市町村議会2011年度統一地方選初当選議員交流会での講演。→テーマは「ネット選挙からオープンガバメントへ」
・「地方議会の広報・広聴におけるソーシャルメディアへの期待/三菱総合研究所・米山知宏」「議会改革白書2013」寄稿。
・地方議員向け勉強会「求められている議会・議員を探る」 ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟主催★多摩地区勉強会」(2013年11月)のパネルディスカッションにパネラーとして出席(LM東京都多摩地域勉強会のご案内 | マニフェスト研究会
・「流山市議会オープンガバメント研修会」(2010年8月)における講師。(http://www.slideshare.net/kedamatti/ss-5037521

ソーシャルメディアは政治を変える?

7月24日に、横浜メディア研究会が主催する「ソーシャルメディアは政治を変える?」というシンポジウムに参加してきた。シンポジウムには100名近い人達が集まり、大変熱気に包まれた場になってた。今回は、下記のページでインターネットでライブ中継(http://tvk-yokohama.tv/)も行われていたので、会場にいない人達でも、ディスカッションの様子を見ることが出来たのではないかと思う。
(注)このURLからは中継はもう見らないが、こちらから動画が見られる模様。→http://www.stickam.jp/profile/tvkyokohamatv

シンポジウムの様子をTwitter実況をしていた(http://twitter.com/kedamatti)ので、そのログも含めて、感想などを整理してみたいと思う。

「ソーシャルメディアは政治を変える?」というアジェンダセッティング

さて、シンポジウムに参加してみての雑感を書こうと思うが、実は、このシンポジウムに参加するにあたって、自分自身の問題認識は何だかふわふわしていた。大変興味あるテーマであることはもちろん間違いないのだが、一方で、俺は何を聞きに行くのだろうと自分自身が良く分かっていなかった。

結局このもやもや感は、シンポジウムが終わっても無くなることはなかった。議員さん側のTwitterに対する想い、議員さんのTwitter利用に期待する国民、両者の意見がぶつかった素晴らしい場であったのにも関わらず、ディスカッションを聞き終わっても、何だかすっきりしない気持ちだったというのが正直なところ。

面白かったのにこの物足りなさは何なんだ。そんな気持ちでこの土日を過ごしていたのだが、このもやもや感を払拭してくれたのは、藤野議員のTwitter上でのつぶやきだった。

目的を見失ったり、最初から目的を持っていない人間は、政治家を辞めるべきです。僕は目的が実現できないなら今すぐでもこの職業を辞めたいです。もっと別の手段の方が実現が早いなら、いつでも辞めます。目的があって手段があるだけ。僕はICTを手段としか受け止めていません。

http://twitter.com/FujinoHideaki/status/2840196374

だから、「ツイッター議員」っていう称号も、むしろ恥ずかしい感じです。僕はICT技術に全く関心がありません。それよりも「目的実現の為の手段の1つ」としか考えていないのです。

http://twitter.com/FujinoHideaki/status/2840212239

この書き込みを読んだとき、正直鳥肌が立った。「ITはツール・手段に過ぎない」とは多くの人が言うことだが、藤野議員のように、ここまでの覚悟を持っている人はいるだろうか。何よりも、ここまで「伝えることに飢えている」議員はいるだろうか。シンポジウムで庄司さんが言っていた「アメリカ人は、『社会を良くするためにソーシャルメディアを使うんだ!』と真面目な顔で言っている。」という話をふと思い出したが、表現は違うが、両者の根底にあるのは「思いを伝えなければならない」ということではないだろうか。

藤野議員のつぶやきを噛みしめると、「ソーシャルメディアは政治を変える?」というアジェンダは、適切なアジェンダではないのではないかという思いを強くした。言い方を変えれば、藤野議員のような想いを持っている人にとって、政治とソーシャルメディアに関して、議論するポイントは無いのではないだろうか。

社会に思いを伝えるためには、手段を選んでいられない

本当に「伝えていること」に飢えている人にとっては、ツールは何でも良い。藤野議員は、「伝えることに関するプロ」であり、「Twitterのプロ」ではない。その時代や場所に合わせて、一番、届けたい人に届けやすい手段を使うことが重要であり、ツールが政治を変えるかどうかという議論は重要ではない。

だからこそ、各議員には、様々な手段を検討して欲しいと思う。街で握手をして、街頭演説をすることも大事なことだとは思うが、その1割の時間を別の手段に変えたら、よりメッセージが伝わるのではないだろうか、と。コミュニケーションをする上で、もっと有効なやり方は無いのか、と。国民が情報を受け取りやすい形は何か、と。

国民は、色々なところから議員を見ている。街角で握手をするとき以外でも、議員を見ている。是非、国民のいる場所に、どんどん顔を出して欲しいと思う。

そして、国民の一人として、「各議員は、何を伝えたいのだろうか」「藤野議員のような覚悟を持っているのだろうか。」ということを、厳しく見ていきたいと思う。

実況ログ

以下は、当日のシンポジウムの実況ログ。当日の中継メモをそのまま掲載しているので、誤字脱字にはご容赦頂きたい。

まず最初は、北京にいらっしゃる庄司さんか、ネットワーク越しのプレゼンテーション。

庄司:北京からは、Twitterにアクセス出来ない。中国政府は神経をとがらされている状況。さて、梅田もちおさんが「日本のWebは残念」と言ったが、そうなのだろうかという問題意識を持っている。
庄司:アメリカのホワイトハウスのWebは、YouTubeTwitterへのリンクが貼られている。連邦政府のCIOは、情報発信先の優先順位を変更し、国民へ直接提供することを優先した。提供する際には、一般国民が使っているツールを使って提供することを重視。
庄司:アメリカのTwitter議員は70名。議場からも生中継。アメリカ人は、「社会を良くするために使うんだ!」と真面目な顔で言っている。ツールの利用を避けている日本とは、大きな違い。ラインゴールドは、ソーシャルツールの使い方を理解している人が増えた、と。

続いて、東京新聞記者の池尾さんから、アメリカのソーシャルメディア事情についてプレゼン。

池尾:2005年からアメリカで特派員をやっていた。変わり者だから、変な取材ばかりしている(笑)。豚の農家が困っているところを取材したり、サブプライムローンの影響を受けて出来たテント村を取材したり、ニューオーリンズの洪水を取材したり。
池尾:何より印象的だったのは、オバマ大統領選の取材。大学生の女の子も支援をしていた。日本では、若い人が政治のサポートをするというのは考えられなかったこと。この背景には、メディアの変革がある。オバマがメディアをどのように使って、また、若い人がどう使ったかを紹介したい。
池尾:オバマが集めた献金は600億強。200ドル以下の献金の数が、ヒラリーに比べて圧倒的に多い。ちりも積もれば、、という状況。なけなしのお金で献金をしていた。これを可能にしたのが、オバマのWebページ。簡単に献金ができるようになっている。
池尾:ただ、普通、献金窓口をもうけても献金が増えるわけではない。なぜか。オバマのサイトはSNSでコミュニケーションツールであった。皆が政治に参加していた。
池尾:今は、国民健康保険が話題になっている。保険に入っていない人も多い。オバマは、一般の人達から、保険に関する意見を集めている。Youtube等を使って。
池尾:911事件でブッシュはテロと戦うことを誓ったが、それにより、メディアがブッシュを批判できなくなってしまった。でも、ブッシュ政策に疑問を持っている人はいた。彼らは、単に情報発信をするだけでなく、票集めなどの行動もする。
池尾:言論の点でも政治の点でも、完全にゲームのルールが変わった。今までは、NYYが誰を応援するかということがテーマだった。今回は、NYYが応援したヒラリーは敗れた。これまでは情報発信手段が限られていた。マスコミだけであったが、パラダイムが変わった。
池尾:ICTは、一般市民の力を変えていくことが出来るツール。ただ、同時に、一般市民の責任も問われる時代になった。どうもありがとうございました。

インターネット新聞「JANJAN」の神山さんのプレゼン。

神山:「ザ・選挙」「e国政」の紹介したい。「ザ・選挙」とは、日本全国の政治家情報を掲載。国政選挙は第1回の選挙から全ての情報を掲載している。政党から動画をもらって比較して載せることもやっている。早稲田大学のマニフェスト研究所と協力して、マニフェストマップを作成。
神山:「ザ・選挙」が何を目指すか。政治に関する正しい情報を提供していきたい。各政治家の学歴、経歴やスピーチ動画もある。過去の動画もアーカイブしている。
神山:2008年だけで、選挙は686回行われている。選挙の無かった日曜日は、1年で3日だけ。多いときは、1600以上の選挙があるときもある。これだけ多くの選挙が行われているのに、選挙公報、ハガキ、ビラ、ポスター、演説、政見放送などしか無い。配布枚数も限られている。
神山:これまで、政治における情報提供は限定的。選挙を変える可能性があるのが、インターネット。「政治の見える化」。「e国政」では、政治家に政策を語ってもらう動画を配信している。政治家と有権者を「政策」で結びつけたい。いつでもどこでも政治が身近に。
神山:ただ、「e国政」をやる上で、公職選挙法には気を遣っている。動画では、投票呼びかけをせず、政策について語ってもらうようにしている。また、不公平にならないように、動画の時間も5分以下と規定している。
神山:インターネットは、政治家と有権者を直接結びつける可能性がある。有権者も発信出来るようになった。「ザ・選挙」では、政治に役立つ情報を提供していきたい。選挙に立候補したい人は、すぐにページを作成するので、いつでも連絡して欲しい(笑)

続いては、メインディスカッション。
阿部よしひろ氏、伊藤ひろたか氏、藤野英明氏、篠原慎一郎氏、池尾氏、神山氏、進行は宮島氏。

阿部:以前民間のIT企業で働いていた。ITを使って、声の届きにくいところに届けたい。
伊藤:政治への不満を解消したい。自分が一票投じた議員が何を考えているか、何をしているか分からないという状況になっている。これを変えていきたい。ITは時間の概念を取っ払ってくれる。街頭演説は、そこに出会った人にしか声を届けられない。ネットは政治のあり方を変えるメディア。
宮島:「民意を問う」というが、民意が分からない。国政選挙では、民意が調査されるが、地方選挙ではそのようなことも少ない。そのあたりについて、神奈川新聞の篠原氏にお話し頂きたい。
篠原:市民の声をくみ取れているのか。10年くらい前から、「市民集会は本当に市民の集会になっているのか」と疑問に思っていた。取材をするときも、陣営を取材するだけでは政治の動き・市民の思いはつかめなくなってきた。
宮島:政治家を知ってもらう、地域の課題を知ってもらうという点で、ITというツールはどうか?
伊藤:まだ手探りの状況。Twitterをやっているのは、単純に面白いから。走りながら考えているという状況。
阿部:議員として新しいツールには、どんどんチャレンジしていきたい。4歳の息子がいるが、色んな事に手を出していく。自分も同じようにやりたい。思いをぶつけ合っていきたい。今日のテーマは、政治だけでなく、社会全体にとって大事なこと。
藤野:以前、東宝に努めていた。政治業界は生ぬるい。民間企業では当たり前のコミュニケーション戦略が通じない。友人からは、人気がある芸能人ブログでも見ろと言われている。政治業界は、民間企業のコミュニケーション戦略に近づく必要がある。
神山:「ザ・選挙」は、出来て3年。まずは政治家DBを作成することが目的であった。一番身近の政治を伝えていくことが課題。辻ちゃんブログを意識したことは無かったが、大事な視点。
伊藤:新しいものに挑戦していくときは手探り。世の中を良くしていくのは、情報発信者だけではなく、情報の受け手も大事。お互いが作り上げていくもの。140文字に制限されたTwitterという場で思いを伝えるのはリスキーな部分もあるが、政治と市民の距離を短く出来ると期待。
阿部:仲間をTwitterに誘っているが、PCの立ち上げが出来ない人も。。(苦笑)。Twitterをやっていると、温かく応援してくれているという気持ちを感じている。相手の気持ちを考えながらレスをすると、支援者になってくれる。日本の良い文化であり、広めて行きたい。
藤野:普段の仕事の中でも、厳しい言葉を浴びせられたりする。ネット上の炎上と変わらない。政治家は、一つ一つの行動が見られている。リアルもネットも変わらない。ICTの利点に光を当てたい。真夜中にも鬱で悩んでいる人も、mixiの足跡がついている。孤独ではないと思える。
藤野:週1回、ネットを通じて出会った人達とカフェに集まって話をしている。そうやって出会えるのが、ICT。
池尾:今は政治家が一方的に情報発信をしている。逆に、ボトムアップの情報の流れが出来れば良い。
池尾:市民も政治家もやるべきことはある。市民も道具はすでにある。政治家は、双方向の流れを作り、思いをくみ取るかが大事。マスメディアにもやることはある。政治を判断出来るDBを作るべき。みんなやるべきことがある。
神山:政治資金DBという試みをやっている。情報が色々なところから集まるとき、どう消化するかを考えないと行けない。
宮島:議員も繋がりたいという思いを持っている。一番地域を知っているのは市民。繋がる政治、ネットワークポリティクスが必要。
池尾:アメリカのジャーナリズムは大変厳しい状況。広告収入が奪われている。一般の人の思いをくみ取ろうという流れが出来ている。ネットワークジャーナリズムの動き。政治も同じ。政治を政治家に任せていてはダメ。
藤野:今日の話を頂いたときに、参加すべきかどうか迷った。ICTに詳しい訳でもない。でも、伝えていきたいという思いがあり、伝える手段は時代とともに変わっていく。ICTで市民の声が届きやすくなったことは本当に素晴らしい。「伝えたい」という思いを大事にしたい。
阿部:インターネット選挙が身近に迫っている。選挙は、納得のプロセス。日頃の政策決定の過程に加われることが素晴らしい。多くの人が参加することが大事。ネット選挙は、必ず解禁される。民主主義は、少数意見を重要視すること。本日はありがとうございました。
伊藤:となりの人達がPC・ケータイを使っていて羨ましかった。ケータイの電源が切れてしまった(笑)。ITが全てがバラ色になるとは思っていないが、コミュニケーションする手段が増えたことが素晴らしい。ある法案に賛成するかどうかという、議員の葛藤にも伝えていきたい。
宮島:これでパネルディスカッションを終わりにしたい。発信していくことが大事。自ら発信して欲しい。化学反応が起こればよい。

以上です。