オープンガバメント・オープンガバナンスが生み出す新しい社会参加の形

文末に貼り付けているスライド(http://www.slideshare.net/kedamatti/20150329-46413063)は、ちょっと前にオープンガバメントについてまとめたものだけれど、関連してふと思ったことをメモしておく。
 
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個人的な関心もあり、「民主主義」「市民参加」などをテーマにした書籍はなるべく読むようにしているのだけれど、最近感じるのは、そこで提唱される民主主義理論が実際の民主主義・市民参加の動きに追いつけていないのではないかということ。もちろん、自分自身は学問の現場に身を置いているわけではないし、感覚に過ぎないのだけれど、実際はもうそういう状況ではないのではないかと感じることが少なくない。
 
それより、IT・インターネットに知見がある人が民主主義について書いたものの方が、はるかに納得感がある。
 
たとえば、数年前になるが東浩紀氏によって提唱された「一般意志2.0」。具体的に提案されるシステム的な部分については一時的なブームになってしまった感じもするが、政治参加における「無意識」「コミュニケーションなき政治」の重要性を指摘したその思想は今も生きている。また、鈴木健氏による「分人民主主義」の概念は、実際の政治制度としては実現されていないものの、それぞれの個人が関心がある複数のコミュニティに関わり活動していくことが一般的になりつつある今、すでにそのような社会になりつつあるとも言える。
 
既存の民主主義理論と東氏や鈴木氏らによって提唱される新しい民主主義のアイデアとのギャップは、ネットが「そもそも政治とはなにか、あるいは国家とはなにか統治とはなにか、その定義そのものをラディカルに変える可能性に繋がっている」という東氏の指摘に象徴されるように思われるが、たとえば「参加」の意味も変わってきたのではないか。
 
まず1点目としては、「参加」の形の多様化・軽量化である。
従来は、自治体の総合計画や政策などに関して行政と市民が議論するというものであったが、いま生まれているのは、ある政策についての直接的な議論ではなく、地域のことをより知ったり、地域がより便利になるアプリ作りを通した参加(=政策そのものに関するものではないという意味で「間接的な参加」)である。代表的なものとしては、各地域で展開される「Code for XXX」の活動があるが、これは、「行政の施策について意見を出すことは難しいがITには明るい」という層が社会・政治に関わる場を作り出したという点で非常に価値がある取組である。
 
2点目としては、「参加」の方向の逆転である。
これまでは「政治・行政への市民参加」という形で、市民が政治・行政に参加するという方向であったが、「市民への政治・行政参加」という逆の方向性が見られるようになったことがあげられる。たとえばITを使った市民参加として、10年ほど前には「電子会議室」や「地域SNS」が行政側が設置する形で活用されていた(※行政以外が設置するものもある)が、行政自身が設置する限り、その運営ルールは行政自身が設定できるものであり、行政がデザインする市民参加の場であったと言える。しかし、現在、TwitterFacebookなどのソーシャルメディアを介して行われる市民参加は、行政側がそれらのツールを主体的に選択して使っているものだとしても、その裏には「ソーシャルメディアを行政は使うべき」という社会的要請があるものであり、そもそもそれらのツールが民間企業によって運営されているものである以上、そのツール上における振る舞い方を行政が全て自由に設計することはできない。自分自身でコントロールできない場において活動せざるを得ないという状況は、「市民が参加する」というよりは「行政が参加させられる」という側面が出てきたようにも思われる。
別の例として、議会との対話の場を市民が企画・開催するというものや、また、選挙時に候補者が提示するマニフェストのフォーマットを有権者側が設計し、そのフォーマットに基づいたマニフェストの提示を求めるという動き(マニフェストスイッチプロジェクト)があるが、これらも市民がデザインする場に政治が参加するようになった例と言えるだろう。
 
これらはぱっと思いついたものを記載したに過ぎないが、詳細に検討すれば、様々な点で「参加」の意味が変容していることが明らかになるかもしれない。
 
選挙はたしかに大事なものであるが、選挙に行かない人は「本来は行くべきである」ことくらいは理解した上で行かないのだから、選挙の直前になって「選挙に行こう」といくら叫んだところで、投票に行く人はそれほど増えないだろう。それよりは、選挙ではなくとも社会や政治に関わることができる(関わりやすい)場所を多様にそして多層的にデザインしていくことの方が必要であるように思われる。そして、日常的に何かしらの形で社会・政治に関わっていくことが、結果的に選挙への参加にも繋がっていくのではないか。
 
以下のスライドは、そのようなことをまとめたものです。