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2016年に読んだオススメ本(20冊)

すでに1月3日になってしまったけれど、2016年の読書を振り返って、勝手にオススメの本を20冊紹介したい。
ちょうど一年前(2015年に読んだオススメ本(20冊) - @kedamatti's diary)にも書いたように、「以下にあげるものは、今年読んだ本の中で特に印象に残っているものだが、私の本の読み方は適当なので、みんな同じ深さ・頻度で読んだ訳ではない。じっくり一度だけ読んだものもあれば、逆に、ちょこっとずつ何度も読んだものもある。また、今年はじめて読んだものもあれば、以前から読んでいるものもある」のだが、今年はいくつかの点で本の読み方を変えた。そのポイントは以下の3点になるが、このようにやり方を変えたのは、「本単体の内容」もさることながら、「本と本のネットワーク」=「知と知のネットワーク」を蓄積していきたいからという思いがあった。

1. 過去の本の再読

まず、意識的に、過去に読んだ本を再読する割合を増やした。以前に読んだ本については、全く内容を忘れてしまっているものも多く、それは非常にもったいないことであった。一度読んでいる本であれば、いくつかのキーワードを拾えば、本の趣旨をすぐに思い出すことができる。新たな本を読むより読書効率も良い。

2. 1週間ごとに読む本を計画(平日1日1冊ペース)

2点目としては、一冊あたりにかける時間をなるべく短くするために、1週間ごとに読む本を1日1冊ずつ決めて、計画的に読むようにした。もちろん、頭からお尻まで全部読もうとしたら1日では時間が足りないので、実際にはさらっと眼を通すだけではある。その中でも、特に「目次」を熟読(熟目)するようにして、本文はポイント部分だけを読むようにしている。その中でも読む価値があるという本については、後日再読して、本文を読み込むようにしている。

3. 本の概要をGoogleドキュメントにメモ

最後3点目としては、読んだ本の概要をGoogleドキュメントにメモするようにした。これまでも、紙やらEvernoteやらに気分次第でメモをしていたのだが、本の内容をなるべく記憶させたいということと、いつでも検索・参照できるようにしたいということから、ほぼすべての本について必ずメモをするようにした。メモの内容としては、「目次」は必須。「目次」さえあれば、本のおおよその内容は思いだせる。目次は、Webにもころがっていたりするので、それが見つかればコピペで済ますことも可能。あとは、気になったフレーズをその必要性に応じて抜き出したり、読書時に感じたことをメモしている。これで自宅の本棚の本をクラウド上で管理でき、実際のブツはなくとも、本の内容(概要)をいつでも振り返ることができる。

2016年のベスト1

(1)町の未来をこの手でつくるー紫波町オガールプロジェクト(猪谷千香)

それでは、本題。2016年のベスト1をあげるならば「町の未来をこの手でつくるー紫波町オガールプロジェクト(猪谷千香)」をあげたい。岩手県紫波町の公民合築施設「オガールプラザ」がどのように作られていったかということを非常にリアルに分かりやすくまとめられたオススメの一冊。オガールは諸々のスキームが注目されるが、もっとも重要な点は、関係者の誰もが妥協せず、本質を追求し続けた態度ではないだろうか。著者による記事はこちら。(岩手県紫波町「オガールプロジェクト」 補助金に頼らない新しい公民連携の未来予想図

町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト

町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト

まちづくり分野

まちづくり分野からは、以下の7冊をあげたい。

(2)地方再生大全(木下斉)

「地方創生」とついているが、「地域経営のマネジメント論」というべきもの。地域もしくは自治体は何に取り組むべきかというところを入口にして、モノ・ヒト・カネ・組織のあり方について鋭く論じた一冊。それらのテーマについて、ゆるきゃら、地域ブランド、エリアマネジメント、観光、補助金、合意形成などの具体的な素材をもとに分かりやすく考察されていて、地域に関わる仕事・活動をしている人には必須の入門書と言ってよいのではないだろうか。

地方創生大全

地方創生大全

(3)新・観光立国論(デービット・アトキンソン

元金融アナリストで日本の文化財の専門家であるデービット・アトキンソンが、日本の観光産業の現状をばっさりと切る一冊。

  • 物事を論理的に考えることができなければ観光産業は改善しない。具体的には、サービス提供者である日本人目線でサービスを評価するのではなく、顧客である外国人目線でサービスを評価していくこと。「おもてなし」や「治安が良い」ではダメ。「お金を落としてもらうだけの高品質なサービス」を作り上げていくことが重要。

  • PRをしても、満足させられるサービスがなければ、悪い評判が広まるだけ。問題は発信力ではなく、観光コンテンツとしての魅力。

  • 文化財で稼ぐ」という意識が重要。文化財でお金をいただき、それを文化資源に再度投資していくこと。

(4)地方再生の失敗学(飯田泰之、木下斉、川崎一泰、入山章栄、林直樹、熊谷俊人

経済学者、研究者、事業家、政治家が、それぞれの立場から地域再生について論じたもの。立場の違いはあれど、主張に共通しているのは「合理的・論理的に物事を考えられるかどうか」ということ。「工場ができても地域の内需が活性化するわけではない」し、「経済原則に逆らった地域再生の方策は不可能」。

地域再生の失敗学 (光文社新書)

地域再生の失敗学 (光文社新書)

(5) ボローニャ紀行(井上ひさし

井上ひさしによる取材旅行のエッセー。地方自治論でもあり、民主主義論でもあり、文化論でもあり、産業論でもあり。 近いテーマとして、創造都市への挑戦――産業と文化の息づく街へ (岩波現代文庫)創造農村: 過疎をクリエイティブに生きる戦略ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか:質を高めるメカニズム人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか―― スペイン サン・セバスチャンの奇跡(祥伝社新書284)などもオススメ。

ボローニャ紀行 (文春文庫)

ボローニャ紀行 (文春文庫)

(6)公共哲学(13)都市から考える公共性(今田高俊)

風景、コミュニティ・デザイン、情報空間などを題材に「都市の公共性」を問い直す。地方創生をしたいのであれば、本来はまずこのような議論をしなければならない。

公共哲学 (13) 都市から考える公共性

公共哲学 (13) 都市から考える公共性

(7) 生活の芸術化―ラスキン、モリスと現代(池上惇)

これからの社会について素晴らしいビジョンを提示してくれている一冊。このしなやかな、柔らかい経済論は、21世紀のまちづくりの方向性を示している。「『労働の人間化と生活の芸術化による社会進歩』こそ人類の進化を推進する原動力」という指摘は非常に共感するし、このような社会を作っていきたい。

生活の芸術化―ラスキン、モリスと現代 (丸善ライブラリー)

生活の芸術化―ラスキン、モリスと現代 (丸善ライブラリー)

(8)パタン・ランゲージ(クリストファー・アレグザンダー

まちづくり界隈の古典。久しぶりの再読。ちまたにあふれる事例集を参照して満足するだけではなく、本来は、それぞれの地域でまさにパタン・ランゲージのような形でまちづくりの知見を体系化していかなければならない。

パタン・ランゲージ―環境設計の手引

パタン・ランゲージ―環境設計の手引

政治学・社会学分野

続いて、政治学・社会学分野からは6冊。

(9)未来政府(ギャビン・ニューサム)

著者がサンフランシスコ市長やカリフォルニア州副知事の立場でオープンガバメントを推進しようとして、取り組み、そして悩んだリアルな記録。 少なくとも日本よりはイノベーティブなアメリカでさえ、これだけ危機感を持っているということの意味を考えるべき。本書が書いているように「もはや政府は自分たちであらゆる問題を解決するのは無理だと認めるべきだ、そして、市民の自発的な関与を促すべき」なのである。

未来政府

未来政府

(10)自己組織性(今田高俊)

社会学者の今田高俊さんが約30年前に書かれた一冊。我が本棚でずっと積読状態になっていたのだが、実に素晴らしい内容だった。「社会科学の言語喪失」を問題視する今田は、この本の目的を「個人と社会とをつなぐ新たな言語の発見」であり「瀕死の状態にある社会理論を自己組織性の観点から再構築して復活させること」とする。今田によれば自己組織性は「システムがある環境条件のもとでみずからの組織を生成し、かつまたその構造を変化させる性質を総称する概念」とされるが、もはや現代が、統一的な価値観で社会が進んでいくことができた高度成長期ではない以上、構造や機能(の意味)を自省的・自己組織的に問い直さなければならない。「自己組織性が新たな時代精神を担うキー・ワードであるのは、社会が主役で変化するのでなく、個々人が主役で社会をつくり変えていくイメージを担うからである」という30年前の指摘は、今の時代にこそ必要である。

自己組織性―社会理論の復活

自己組織性―社会理論の復活

他は以下。

(11)民主主義(文科省

(12)哲学の起源(柄谷行人

哲学の起源

哲学の起源

(13)気流の鳴る音(真木悠介

気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫)

気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫)

(14)福沢諭吉の哲学(丸山眞男

福沢諭吉の哲学―他六篇 (岩波文庫)

福沢諭吉の哲学―他六篇 (岩波文庫)

インターネット・データ分野

インターネット・データ分野からは以下の2冊を。

(15)〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則(ケヴィン・ケリー)

米国「WIRED」誌の創刊編集長であるケヴィン・ケリーが、インターネットに次に来る不可避な方向性について論じたもの。例えばiPhoneTwitterFacebookは、どれもおよそ10年前に生まれ、今や生活に欠かせないものになったが、電話やインターネットを行うことが「不可避」なのであって、iPhoneTwitterFacebook自体は不可避ではないとする。10年前にこれらのツールが生まれたように、また新たなツールが生まれてくるだろうが、訳者の言葉を借りれば、どのようなツールでも以下の「不可避」な方向性の中で進化していく。

ネット化したデジタル世界は名詞(結果)ではなく動詞(プロセス)として生成し(BECOMING)、世界中が利用して人工知能(AI)を強化することでそれが電気のようなサービス価値を生じ(COGNIFYING)、自由にコピーを繰り返し流れ(FLOWING)、本などに固定されることなく流動化して画面で読まれるようになり(SCREENING)、すべての製品がサービス化してリアルタイムにアクセスされ(ACCESSING)、シェアされることで所有という概念が時代遅れになり(SHARING)、コンテンツが増え過ぎてフィルターしないと見つからなくなり(FILTERING)、サービス化した従来の産業やコンテンツが自由にリミックスして新しい形となり(REMIXING)、VRのような機能によって高いプレゼンスとインタラクションを実現して効果的に扱えるようになり(INTERACTING)、そうしたすべてを追跡する機能がサービスを向上させライフログ化を促し(TRACKING)、問題を解決する以上に新たな良い疑問を生み出し(QUESTIONING)、そしてついにはすべてが統合され彼がホロス(holos)と呼ぶ次のデジタル環境(未来の〈インターネット〉)へと進化していく(BEGINNING)という展開だ。

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

(16)統計学が日本を救う(西内啓)

統計の専門家が、データにもとづいて日本の現状を把握し、政策の方向性について提案するもの。最終的な政策決定はまさに政治的なものだが、その前の分析をデータを活用してしっかりと行うことで、無駄な選択肢を排除でき、政治的コストも軽減できる。より詳細なデータ分析を行っているものとして、仕事と家族 - 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)子育て支援が日本を救う (政策効果の統計分析)仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)なども参考になる。

その他

最後に、その他分野から、以下の4冊。

(17)アーロン収容所(会田雄次

著者が経験した捕虜の詳細な記録。

アーロン収容所 (中公文庫)

アーロン収容所 (中公文庫)

(18)カスハガの世界(みうらじゅん

カスな絵ハガキにそそられるならば、ぜひ読むべき一冊。

カスハガの世界 (ちくま文庫)

カスハガの世界 (ちくま文庫)

(19)がんばれ仏教!(上田紀行

大学時代にも講義を受けた上田先生の本。あまり真面目に授業に出ていなかった私だが、上田先生の講義は強く印象に残っている。この本も、上田先生のリアルな言葉で書かれていて、引き込まれるように読んだ。仏教は本来、プラグマティックな考えを持っているとともに、物事の因果関係を論理的に把握していこうとするもの。お寺が元気な街には大きな可能性がある。

私は有馬の生き方に〈ホトケ〉を感じる。チェルノブイリの子どもたちが苦しんでいると聞いてはその援助に邁進し、タイのエイズホスピスに出会ってしまうと、何かの支援ができないかと知恵を絞り、作務衣プロジェクトを立ち上げ、ターミナルケアに関わり、葬式を改革し、寺を面白い場にしようと様々な試みを仕掛ける高橋の姿に〈ホトケ〉を感じる。
菩薩行やら慈悲やらを単に教義として、あたかもありがたそうに語り、その自己矛盾に何も気づかず、世界の苦悩にも鈍感かつ冷淡な僧侶に、私は自分の葬儀をしてもらいたいとは思わない。そこにはどうしても〈ホトケ〉の姿が見出せないからだ。いくら言葉で「慈悲」を語っても、そこには慈悲の心が感じられないからだ。

がんばれ仏教! (NHKブックス)

がんばれ仏教! (NHKブックス)

(20)ちいさいおうち(バージニア・リー・バートン)

息子にも読んでもらいたくて買った絵本。

ちいさいおうち (岩波の子どもの本)

ちいさいおうち (岩波の子どもの本)

2017年

こうやって振り返ってみると、読みたいと思っていたものが全然読めていないことに気づく。歴史小説はおそらく一冊も読んでいないし*1、漫画は「そばもん」だけだったかもしれない。絵本ももっと読みたい。
かつてショーペンハウアーは「本ばかり読んでるとバカになる」(意訳)と語ったが、2017年も本を読んでバカになっていきたい。 嬉しいことに、Kindle Unlimited から除外されてしまっていた「光文社古典新訳文庫」が読み放題の対象に帰ってきてくれた*2。これで安心してバカになれる。

*1:真田丸は毎週見てたけど

*2:Kindle Unlimited は、光文社古典新訳文庫だけで入る価値がある。