【RESASの活かし方(2)】人口分析をもう少し深堀りする

さて、「【RESASの活かし方(1)】まずは人口分析から - @kedamatti's diary」では、人口分析の入口として、自然動態・社会動態の動きをRESASを活用して分析した。第2回は、「社会動態」を少し深掘りして分析をしてみたい。今回も分析対象は長野県の原村である。

転入者の属性

長野県原村では、これまで、転入者数が転出者数を上回る「転入超過」となっていることが多かったが、まずは、転入者の属性について確認したい。

最初に見たいのは、年齢別の転入数である。トータルの転入数が同じだとしても、若い転入者が多いのか、それとも年配の転入者が多いのかで、当然、検討すべき戦略は変わってくる。RESASを確認してみると、「年齢階級別純移動数の時系列分析」というグラフが提供されているが、これは「転入者数から転出者数を減じたもの」、つまり差引した人口増減数を示したものである。このグラフでは、転入者数・転出者数のそれぞれのデータは確認できないため、元の統計データ(統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告)を確認する。

統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 統計表から辿っていくと、「年齢(5歳階級),男女別他市区町村からの転入者数-全国,都道府県,市区町村」という統計表があり、各自治体ごとに5歳階級別の転入者数を把握することができる。下図は、原村を対象にそのデータをグラフ化したものである。

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これを見ると、15歳~39歳までの若い年齢層の転入者数が多いことが分かるが、当然のことながら、その割合は東京などの都市圏と比べると小さい(東京都は、総転入者数に占める15歳~39歳の割合が7割程度だが、原村の場合は5割程度)。
原村の転入状況で特徴的なのは、15歳~19歳の占める割合が他の自治体に比べて高いことである。たとえば、東京都は4%であり、お隣の諏訪市は3%であるが、原村の場合10%という状況である。この要因としては、原村にある「八ヶ岳中央農業実践大学校」への就学によるものか、もしくは、農業への就職などが仮説としては考えられるが、正しく把握するためには別のデータが必要である。

転出者の属性

一方、転出者数を年齢別にみると下図のようになる。

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転出者数については、20代の多さが際立っている。先ほどの転入者数のグラフと比較すると、20代は転出超過の状況である。15歳~19歳は転入数の方が多いが、その後、20代では出て行ってしまっている。仮説になるが、この要因としては大学等の学校卒業後の「就職」に問題がありそうである。

なお、以上の転入者数と転出者数の差分(=純移動数)を時系列で分析したものが以下のRESASのグラフだが、15〜19歳→20〜24歳のところの転出超過数が拡大傾向にあることが分かる。

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転入者の「転入先」

次に、話を転入者に戻して、彼らが具体的にどこの地域に転入しているのか、ということを確認したい。転入先のエリアは、仮説的に転入の理由を把握することもできる要素である。
ここでは、国勢調査データの中から、「基礎自治体(市区町村)よりも小さな地域単位において集計された統計」である「小地域統計」を用いる。小地域統計にもいくつかのデータ項目があるが、移動については「移動人口の男女・年齢等集計に関する集計」から確認することができる。

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小地域統計から転入先地域を分析すると、地域によって、転入の実情に大きな違いがあることが分かる。たとえば、地域Lや地域Oは他県からの転入者の割合が非常に高い一方で、地域Gや地域Kは長野県内からの転入者が多くなっている。また、地域Bは国外からの転入者の割合が高く、地域Fは原村内から異動してきた人の割合が比較的高い。これらの情報は、まちづくりやプロモーションを考える上で、非常に重要な情報である。国外からの転入者が多い地域は、おそらく農業従事者だろうか。県外からの転入者が多い地域は、ペンション暮らしにあこがれる比較的高齢な世代であろうか。一方、原村内からの異動が多い地域は、どのような理由からだろうか。その地域に暮らす人であれば、おそらくこれらの要因を感覚的に把握しているのではないかと思われるが、小地域統計の別のデータを参照することで、仮説的に検討することが可能である。その点について、以下で簡単に触れたい。

常住地による従業地・通学地

小地域統計には「常住地による従業地・通学地」というデータもある。これは、「移動・異動」に関するデータではないが、移動・異動の要因を検討する上でのヒントを提供してくれるものである。

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他県からの転入が多かった地域Lは、住民の75%が学生で、転入者も学生であることが想像される。国外からの転入割合が高かった地域Bの住民は、半分が「自宅で従業」している方であり、国外からの転入者はおそらく農業に従事する方であると仮説できる。また、原村内からの異動割合が高かった地域Fは、通学者(しかも県内他市町村への通学者)の割合も他地域より高いが、何かしら関係があるのもしれない(通学するための交通手段の関係だろうか?)。

まとめ

このように、その地域に住んでいない者であっても、いくつかのデータを複合的に見えていくことで、地域の様子が徐々に見えてくる。小地域統計には他にも有用な統計が整備されているので、その地域で生活している住民・行政職員であれば、より効果的に活用できると思われる。もちろん、小地域統計でなく、自治体単位のデータを用いれば、他自治体との比較も可能である。また、各自治体の住民基本台帳データも有益な情報源である。いずれにしても、まずはRESASを入口として基本的な状況を把握しつつ、問題認識に応じて、元となる統計・データを多角的に分析していくことで、自分たちの地域を立体的に把握することができるし、ここにアンケート調査などの情報を加えれば、より具体的に地域の実態を理解することができるだろう。