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2015年に読んだオススメ本(20冊)

今年もあと3日ということで、今年読んだ本を振り返ってみようと思う。
勝手に20冊をご紹介。

以下にあげるものは、今年読んだ本の中で特に印象に残っているものだが、私の本の読み方は適当なので、みんな同じ深さ・頻度で読んだ訳ではない。じっくり一度だけ読んだものもあれば、逆に、ちょこっとずつ何度も読んだものもある。また、今年はじめて読んだものもあれば、以前から読んでいるものもある。

組織論関連

(1)失敗の本質(日本軍の組織論的研究)

今年のベスト1をあげるとするならば、「失敗の本質」をあげたい。私がこの本を最初に読んだのは大学時代だったから、今から10年以上前になる。その時は、そこそこ面白いと感じつつも、本が指摘する内容を充分に感じることができなかったのではないかと思う。今年の夏あたりだと思うが、本棚に置いていたこの本がふと気になり、たまたま手に取ったというものなのだが、いま読むことができて良かった。
少し読めば、「これは今の地域・組織ことを言っているんじゃないか?」と思わされる。「地方創生」だのなんだの言われているが、その成否は「失敗の本質」に書かれている日本的組織の課題をどの程度克服できるかということではないか。

「いやいや、理論とか抽象的なことは不要。具体的な戦略は現場で考えるから」

と指摘する人もいるかもしれないが、そのように「科学的思考」や「抽象的思考」を忌避し「空気」で意思決定をすることが問題だというのが、「失敗の本質」の主張。「具体」と「抽象」を行き来しながら、主観的かつ客観的に考える必要がある。オススメの一冊。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

まちづくり関連

(2)地方再生のレシピ(奥田政行)

まちづくり関連は、ハードに関するもの(リノベーションなど)もあればソフトに関するもの(クリエイティブシティ論、コミュニティデザインなど)もあり、色々読んだが、一番印象に残っているのは、鶴岡のレストラン「アルケッチャーノ」の奥田シェフが書いた「地方再生のレシピ」。奥田さんのレストランは銀座にもあって、以前行ったことがあったのだが、今回この本を読むまでは、ここまですごい人だとは認識していなかった。

奥田さんは、シェフでありながら、科学者のような目線で、地域、環境、風土を捉えていく。

「調べて調べて、知り尽くすと、悪いところも見えてくる」
「それも全部ひっくるめて地域のことを考えると、好きが愛に変わる」
「覚悟ができる」
「自分の行動が変わる」

奥田さんは「地域活性化にレストランが有効」「生の素材は店に並んでいてもその場では食べられない。言葉でその良さを伝えるには限界がある」と指摘する。当たり前のようで、実は見落とされていた視点ではないだろうか。これまたオススメの一冊。

地方再生のレシピ ~食から始まる日本の豊かさ再発見~

地方再生のレシピ ~食から始まる日本の豊かさ再発見~

(3)ぼくらのリノベーションまちづくり(嶋田洋平)

人口減少社会に必要なまちづくりは「リノベーション」であり、「ほしい暮らしは自分でつくる」ということ。「リノベーションまちづくり」の手法は、今年一年で一気にブームと言えるような状況になって、いまや全国各地で展開されている。リノベーションをすればいいという単純な話ではないが、これからのまちづくりを考える上では、押さえておくべき一冊。

(4)稼ぐまちが地方を変える(木下斉)

補助金はやめろ!」「稼げ!」以上。

(5)こんなまちに住みたいナ(延藤安弘)

絵本を題材にした、素晴らしいコミュニティデザイン論。様々な絵本から、「コミュニティデザインの素」を抽出して、「こんなまちに住みたいナ」という思いを作ってくれる一冊。同じく延藤さんが書かれている「まち再生の述語集」と合わせて読みたい。
巷に流布するいわゆる「成功事例」の不毛さは、そこに「物語性」と「アート性」が無いことも要因だと思われるけれど、絵本は、「ことば」と「絵」で、アート性ある物語を作っていく。まちのことを考えるときに、絵本を読みながら「ユーモアを楽しむゆとり」や「自由な発想」を持って考えていくことも大事ではないか。そして、絵本の良いところは、それが「大人」と「子ども」を繋ぎうるメディアにもなること。

(6)地域を変えるソフトパワー(藤浩志)

今年は、アートの視点からまちづくりを考え始めた年だったが、アートの素人にも分かりやすく導いてくれる一冊だった。冒頭の以下の言葉は本当にそのとおりで、だからこそ、未完成なまちは面白い。

完成された場にはそれを享受しようとする人が集まるが、まだまだ未完成で「これから何かが起こりそうな場」には行動を促す主体性のある人たちが集まってくる。

地域を変えるソフトパワー アートプロジェクトがつなぐ人の知恵、まちの経験

地域を変えるソフトパワー アートプロジェクトがつなぐ人の知恵、まちの経験

(7)超芸術トマソン赤瀬川原平

今年は、Code for Niigata でトマソンまちあるきを開催したこともあって再読。これほど酒の肴になる一冊も無い。この本がトマソンの事例調査結果だとすれば、「路上観察学入門」はそれを調査方法(=まちの歩き方)も含めて理論化したものである。この2冊を読めば、まちあるきは何倍も楽しくなる。

超芸術トマソン (ちくま文庫)

超芸術トマソン (ちくま文庫)

(8)加茂本

加茂市の商店街の人たちで作られたフリーペーパーというかフリーブック。「商品の紹介は最小限。値段は記載しない」という方針が何より素晴らしい。「お店の人」にターゲットをあてたソーシャルメディア的フリーペーパー。加茂に行かないと入手できないと思われるが、ぜひ、手に取って欲しい一冊。

詳細は、以前ブログに書いているので、そちらをご覧いただきたい。
kedamatti.hatenablog.jp


政治学関連

この分野はもうずっと読んでいるが、今年の自分の中でのキーワードは「正統性/正当性」と「プラグマティズム」で、特に以下の本にはお世話になった。堅い話になってしまうので列挙するだけだが、中でも「アブダクション」は種々の概念や理論を生み出していく上で、非常に参考になる一冊。

(9)アブダクション − 仮説と発見の論理(米盛裕二)

アブダクション―仮説と発見の論理

アブダクション―仮説と発見の論理

(10)立法理学としての立法学(井上達夫

立法学のフロンティア〈1〉立法学の哲学的再編

立法学のフロンティア〈1〉立法学の哲学的再編

(11)現代の貧困(井上達夫

現代の貧困――リベラリズムの日本社会論 (岩波現代文庫)

現代の貧困――リベラリズムの日本社会論 (岩波現代文庫)

(12)政治の世界(丸山眞男

政治の世界 他十篇 (岩波文庫)

政治の世界 他十篇 (岩波文庫)

(13)プラグマティズムの作法(藤井聡

プラグマティズムの作法 ~閉塞感を打ち破る思考の習慣 (生きる技術! 叢書)

プラグマティズムの作法 ~閉塞感を打ち破る思考の習慣 (生きる技術! 叢書)

(14)民主主義のつくり方(宇野重規

民主主義のつくり方 (筑摩選書)

民主主義のつくり方 (筑摩選書)


データ関連

(15)ソーシャル物理学(アレックス・ペントランド)

データを活用して、いかに都市の生産性・クリエイティブ性を向上させるかということについて論じている本。「ビッグデータ」「集合知」「ソーシャルネットワーク」「モバイルセンシング」「パーソナルデータストア」あたりのキーワードに関心がある方にはオススメ。リチャード・フロリダのクリエイティブ論や、佐々木雅之さんの創造都市・創造農村論を合わせて読むと良いと思う。

ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学


ちなみに、国主催の政策アイデアコンテスト(RESASコンテスト)の提案書(以下)では、このソーシャル物理学の考え方も参考にしている。

Code for Niigata 地方創生☆政策アイデアコンテスト2015の提案書を公開します


(16)人口学への招待(河野 稠果)

この本は、人口という数字の見方そのものを初心者にも分かりやすく教えてくれる一冊。今年、各自治体は「人口ビジョン」を策定しているけれど、単に人口を推計すればいいというものではない。国はRESASを開発・提供したが、人口という数字についての基本的なことを伝えていくことも大事なんじゃないかということでご紹介。

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)

エッセイ・随筆

さて、毛色は変わり、エッセイや随筆についても何冊か。

今年の本としては、まず5月に逝去された長田弘さんのものをあげたい。

(17)なつかしい時間(長田弘

いまの時代の言葉、風景、場、時間というものを厳しい視点で見て、優しいことばで表現する長田さん。大好きな言葉ばかりで、常に側に置いている。

対話をゆたかな時間にするものは、喋ること・話すことでなく、黙ること

なつかしい時間 (岩波新書)

なつかしい時間 (岩波新書)

(18)記憶のつくり方(長田弘

長田さんの本から、もう一冊お気に入りを。

 記憶は、過去のものでない。それは、すでに過ぎ去ったもののことでなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。とどまるのが記憶であり、じぶんのうちに確かにとどまって、じぶんの現在の土壌となってきたものは、記憶だ。
 記憶という土の中に種子を播いて、季節のなかで手をかけてそだてることができなければ、ことばはなかなか実らない。じぶんの記憶をよく耕すこと。その記憶の庭にそだってゆくものが、人生とよばれるものなのだと思う。

記憶のつくり方 (朝日文庫)

記憶のつくり方 (朝日文庫)

(19)山口瞳

山口瞳さんの文章が大好きで、以前から読んでいるけれども、今年もちょくちょく手に取った。「江分利満氏の優雅な生活」「行きつけの店」「酒呑みの自己弁護」「温泉へ行こう」など、どれも本当に面白い。

行きつけの店 (新潮文庫)

行きつけの店 (新潮文庫)

酒呑みの自己弁護 (ちくま文庫)

酒呑みの自己弁護 (ちくま文庫)

(20)寺田寅彦随筆集

100年前に書かれたものであり、いまさらこれを紹介するかというものかもしれないが、私の愛読書で、今年も何度もお世話になったので。書かれている内容は当然だが、何よりその表現が好きなのである。文末にたびたび使われる「〜ではあるまいか」という表現が寺田寅彦ほど似合う人はいないと思っている。

寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

2016年も本を楽しむ

私が読む本は、自分で選ぶものももちろんあるが、FacebookTwitterの知り合いが薦めているものも少なくない。オススメ本のつぶやきを見ると、すぐにAmazonでぽちってしまう。なので、これからもどんどんつぶやいてもらえると嬉しい。

2016年も本を楽しみたいと思う。読みたい漫画も色々ある。
年末年始に読みたいと思って買った本は、すでに山のようになっている。