@kedamatti's diary

米山知宏の思考メモです(専門は、知/情報/自律的な組織づくり/プロジェクトマネジメント/ナレッジマネジメント/コミュニケーション/オープンガバメント/民主主義/市民参加/シビックテック)

「がっかり」の先にある「魅力」−1つのまちあるき論−

昨日11/28に、Code for Niigata では、新潟市が主催する“がたまる”アイデアソン&ハッカソンの1コマをお手伝いして、マッピングパーティーを開催した。

Code for Niigata が運営するマッピングパーティーは、今回が2回目となる。1回目は2015年8月に「トマソン探索」をテーマとして開催したが、今回のテーマは「古町のがっかりポイントを探そう!」というもの。「古町」はかつては若者で賑わうエリアだったらしいのであるが、最近は、大型書店(コメリ書房)やラフォーレ原宿が撤退したりと、正直、流れは良くない。そのようなエリアで、なぜ「がっかりポイント」を探そうとするのか。本記事は、「こんなマッピングパーティーがあってもいいのでは」ということで参考になればと思い、記すものである。

さて、今回のマッピングパーティーの概要は以下の記事に書いているが、他の地域で行われているマッピングパーティーと比較して、「ツール」と「テーマ」の2点に特徴がある。
http://www.codeforniigata.org/?p=194



1. 【ツール】Open Street Map へのデータ登録を目的としたイベントではなく、Fix My Streetちばレポ のように、位置情報に紐付ける形で画像とテキストを投稿できるアプリを構築したこと。
2. 【テーマ】「まちの良いところ・好きなところ」といったポジティブなテーマでもなければ、「まちの危険なところ・修理してほしいところ」というような Fix My Street / ちばレポ 的なものでもなく、「がっかり」「トマソン」という一見ネガティブなテーマを選択したこと。

1. 【ツール】Fix My Street / ちばレポ的なアプリを使ったまちあるき

一般的に「マッピングパーティー」と言うと、下記のように、Open Street Map 上にデータを登録していく、つまり地図を作っていくことを目的としたまちあるきのことを指すが、

地図を共同作成するプロジェクトであるオープンストリートマップにおいて、あるテーマに沿って地図情報を集める行事。店舗・災害時の避難経路・バリアフリー情報など、さまざまなテーマに基づいて実際に街を歩き、地図作成を行う。
(出典:https://kotobank.jp/

「デジタルも紙も関係無く、地図にまちの情報を落とし込んでいくもの」と広義に捉えれば、ガリバーマップのような取組もマッピングパーティーとして位置付けられうるものである。ガリバーマップについては、以下の報告書で詳しくまとめられている。

楠町の宝探しマップづくりのための市民ワークショップ報告書(概要版)(PDFファイル)

Code for Niigata としても、今後、Open Street Map 上の地図を作っていく狭義のマッピングパーティーも開催したいと考えているが、ITに関心がない人でもまちあるきを気軽に楽しめるような場を用意したいという目的から、過去の2回のマッピングパーティーでは、Fix My Street / ちばレポ的なアプリを使ったまちあるき(広義のマッピングパーティー)を開催した。

今回使用したツールについては、以下で公開している。 http://event2015mapping.codeforniigata.org/

2. 【テーマ】「がっかりポイント」「トマソン物件」の発掘

2点目はテーマ性である。マッピングパーティーやまちあるきのテーマとしては、以下のように、「面白い場所」「とっておきの場所」など、まちの「良いところ」を集めることを目的としたものや、ちばレポのように、補修すべき場所の情報を集めることを目的としたものが多い。

マッピングパーティーながれやま2013
ちばレポ

今回、Code for Niigata が設定した「がっかりポイント」「トマソン物件」の発掘は、そのどちらにも該当しない。あえて言えば、地域の課題を収集する「ちばレポ」に近いものではあるが、「解決すべき課題を見つけようとしている訳ではない」ということと、「道路などのハードだけを対象としたものではなく、ソフト(空間的・エリア的なもの)をメインの対象としている」という点で異なるものである。

さて、「がっかりポイントを探す」という一見ネガティブなテーマ設定であるが、やってみて感じるのは、「良いところを探す」という行為以上に、「がっかりポイントを探す」というのは実は非常に創造的な行為なのではないか、ということである。

我々は普段、「がっかり」するような場所ではなく、自分自身が楽しさや魅力を感じる場所に行くものである。だから、がっかりする場所のことは実は知らない。そこに、「がっかり」という「(ある意味)負の空間・場所」を探す行為の特徴がある。その行為は必然的に、我々を普段訪れない場所に誘導する。そして、この行為の何より重要な点は、これまで漠然と「ダサい」と思っていただけの場所・空間が、それを実際に見て、がっかりするポイントを探そうとすることで、その空間が持つ魅力も見つけてしまうということである。昨日、まちを歩く中でも、確かに人が閑散とした地下商店街であったり、(日中だからということもあるが)真っ暗な飲み屋街−正確には飲み屋アパートとでも言うべき建物だが−には残念な気持ちを持ったが、同時に、その空間が持つ独特の雰囲気に魅力を感じたことも事実である。「がっかりポイント」を探しているはずなのにも関わらず、その場をじっくり眺める中で参加者から出てくる意見は、こうしたら面白い空間になるのでは?という「可能性」に関するものだった。本当の「魅力」というものは、「がっかり」を探し続けた先にあるのではないか、とさえ思えてくる。

もう一つこの行為の魅力をあげるとするならば、それが「ユーモア性」を持ったまちあるきであり、シンプルに「面白い」ということである。Fix My Street のように、「地域の課題を探す」という行為は重要ではあるが面白さには欠ける。しかし、がっかりポイントの探索は、まちにツッコミを入れながらのまちあるきであり、非常に面白い。まちあるき番組で例えるならば、正統派の「ブラタモリ」ではなく、「モヤさま」的な面白さと言えるだろう。(ブラタモリブラタモリで大好物だが)

■モヤモヤさま〜ず 「モヤモヤ」は当番組のメインコンセプトである。当初はテレビ的でないマイナーな街を取り上げるという中で「何があるか分からないのでモヤモヤする」という意味で用いられていた。しかし回を重ねるごとに、何とも言い表せぬ微妙な雰囲気としての意味で使われるようになってきている。
(出典:Wikipedia

「地域課題の発見」も「がっかりポイントの発見」も、「まちのことを知る」という意味では同様の行為であるが、モヤさま的な笑いを入れつつ、まちを歩きたいということであれば、「がっかり」まちあるきはオススメである。私自身も、さらに、まちに隠れている「真のがっかり」=「まちの魅力の原石」を見つけたい。