@kedamatti's diary

米山知宏の思考メモです(専門は、知/情報/自律的な組織づくり/プロジェクトマネジメント/ナレッジマネジメント/コミュニケーション/オープンガバメント/民主主義/市民参加/シビックテック)

「ネット選挙」より「議会Web選挙」

ネット選挙が解禁されることで「政策議論が生まれる」「投票率が向上する」「正しい選択ができる」などと期待されているようであるが、個人的にはそれほど期待していない(もちろん、解禁されること自体は望ましいのですが)。「選挙期間中の候補者は都合の良いことしか言わない」というような指摘は従来からあったが、それはネット選挙が解禁されても変わらないし、そもそも国民・市民の側が、選挙期間中の数週間でどれほど適切な判断が行えるのだろうかという疑問もある。

 

それより、選挙期間中以外のことを考えた方が本質的である。たとえば地方議会であれば議員の任期は4年で、選挙期間を除いた期間は約3年11ヶ月もある。少なくとも現職議員については、3年11ヶ月をかけてじっくり選択することができるはずである。何も、選挙期間中になってから悩む必要も無い。

 

今では、多くの地方議会で議事録はWebで公開され、本会議や委員会の様子を動画で公開しているところも少なくない。すでに公開されている情報を見るだけでも、各議員の態度や考え方を把握することができる。とくに動画は、ちょこっと委員会での議論の様子を見るだけでも、「この人だけには投票したくない」という判断ができる貴重な情報源である。以前、とある議会の委員会をYoutubeで見たが、議会改革を進めようという「事務局職員」の提案に対して、一部の「議員」が理由にならない理由を述べて提案に反対していた。このような情報は、投票する際の何よりの判断材料になるが、選挙期間中に候補者から発せられる情報からでは絶対に得ることはできない。

 

とは言うものの、日々忙しく生活する住民にとっては、議事録や動画を見ることは簡単ではない。目的・関心が無ければ見ようとは思わないし、関心があったとしても見る時間が取れない人もいるだろう。そこで検討されるべきは「議会Webのあり方」である。時間が無い中で議会の情報に触れてもらうためには、少しでも見やすく&分かりやすい形で情報を提供したい。

 

議会Webの現状

いまの地方議会のWebも、それなりに情報は公開されている。完璧とは言えないにしても、情報が公開されてなくて議会活動の様子が全く分からないという状況では無い。議員情報、スケジュール、一般質問の通告、議事録、動画、採決結果などは多くの議会で公開されている。積極的な議会では、それらの情報に加え、議員個人の賛否、請願・陳情の検討ステータス、会議時間、各委員会の年度計画等を公開しているところもある。

 

問題は、それらの情報が個別バラバラに公開され、情報間の連携が無いことである。地方議会のWebを見て頂くと分かるが、それぞれの情報は基本的にそれぞれの入口からしかアクセスできない。スケジュールを見たければスケジュールのリンクから入ることになるが、そこからある日の会議の議事録に飛ぶことはできない。改めて、議事録システムに行き、日付等で検索する必要がある。議案や採決結果なども同様である。

 

ヤンキースWeb」と「地方議会Web」

このような地方議会Webの状況に対する解決の方向性として、メジャーリーグのチーム(たとえばヤンキース)のWebが非常に参考になる。

というのも、「ヤンキースWebで提供される情報」と「地方議会Webで提供される情報」は多くの類似点があるからだ(下表)。

 

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ヤンキースのWebを見ると、上記の各情報が繋がっていて、非常に見やすい。

スケジュールを開けば、未来の日付であればチケット予約画面に飛び、過去の日付であれば試合結果に飛ぶ。試合結果の画面からは、各選手の成績にもリンクしていく。

 

選手個人のページでは、ポジションや年齢などの基礎情報だけでなく、最近10試合の成績、最近数シーズンの成績、過去の表彰、動画・写真など、各選手に関する様々な情報を見ることができる。議員個人のページも同じように様々な情報が提供されれば、少しは日常的に関心を持ちやすくなるのではないだろうか。

 

http://newyork.yankees.mlb.com/

 

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  • 地方議会Webであれば、過去日付の会議については議題、議決結果、議事録等にリンクさせたい。そして、未来日付の会議については、その会議で議論して欲しいテーマなどを送付できるようにしても良い。

 

 

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  •  地方議会Webであれば、ある会議の議決結果、議事録、動画などが簡単に見られるようにしたい。TwitterFacebookなどソーシャルメディアとの連携も当然実現したいところ。

 

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  • 地方議会Webであれば、議員個人の賛否、発言などの情報はもちろんのこと、会議の出席率などの情報が公開されても良い。(実際に出席率データを公開している議会はすでにある)

 

議会情報の「一生」を捉える

これからの地方議会Webを考える上で大事な視点は「議会情報の『一生』を捉える」ということだろう。現在は、スケジュールはスケジュールのリンクから、議決結果は議決結果のリンクから、議事録は議事録のリンクからと、各情報が分断されてしまっているが、これらの情報は本来密接に繋がるものである。

 

たとえば「請願」情報の一生を考えると、「本会議での委員会付託」「委員会での検討」「本会議での採決」と大きく3つのステップを踏むが、現在はこの3つのステップの議事録がバラバラに作られる。それらの議事録と最終的な採決結果が相互にリンクし、「請願の『一生』」としてたどった一連の経過を簡単に把握することができれば、住民も議会活動を理解しやすくなるのではないか。

 

情報間に横の繋がりを持たせながら、どのような情報をどのように提供していくべきか。さらには、情報提供だけではなく、地方議会のWebを「議会と住民が交わる場」として捉えた上で、どのようにデザインしていくべきか。

個人的には、議会Webは、選挙時に有権者が適切な判断をする上で、ネット選挙解禁以上に重要なものであると考えている。

 

アイデアとしては色々考えられるが、私の個人的な妄想はまた別の記事で整理したい。